いずれ あやめ か かきつばた

いけばなについて

「あやめ」も「かきつばた」もアヤメ科の植物ですが、甲乙つけがたいそれぞれの魅力があります。ついでによく似ている「花菖蒲」、近縁種の「シャガ」の特徴や違いを見てみましょう。

アヤメ

アヤメ科 「文目」「菖蒲」

アヤメの仲間の特徴は花びらにある「文目」模様です。
花も小型のものが多く、陸地に自生します。

山梨県の櫛形山のアヤメの群落は有名です。標高約2,000mの高地に生息しています。

【櫛形山のアヤメ】7/2
不安定なお天気が続いている南アルプス市。櫛形山のアヤメは咲きはじめ、裸山は見頃を ...

切花で出回ることはほぼないので、入手が難しい花です。したがっていけばなで生けられることは少ないです。

かきつばた

かきつばた

アヤメ科 「燕子花」「杜若」

カキツバタの花びらには白い線状の模様があります。葉は平らで葉脈の盛り上がりがないです。
花は一年を通して咲くといわれています。
水深の浅い池などに自生します。かつては人里の近隣に自生していたのですが、開発とともに減少し、愛知県の「小堤西池のかきつばたの群落」が天然記念物として保護されていますが、現在は自生しているところは少ないです。

国の天然記念物 小堤西池のカキツバタ群落(日本三大カキツバタ自生地) | いいじゃん刈谷! - 刈谷市観光協会公式ホームページ

園芸品種も多く、一部流通がありますが、現在は特殊な花となってしまいました。
また、この花の紫色は高貴な色とされています。古来より多くの歌にも詠まれ、絵画の題材にもされて来ました。

古典のいけばなでは、「出生正しき花」として、昔から好まれていけられました。葉はしなやかで柔らかく「女性的に生ける」と言われています。季節により、花や実、葉組、「末枯れ葉」などの扱いが変わってきます。

菖蒲(花菖蒲)

アヤメ科 「菖蒲」

「葉菖蒲」(サトイモ科)と分けるために「花菖蒲」と呼ばれています。(詳しくは後述)

花菖蒲は江戸時代、園芸改良が盛んで、「肥後系」「伊勢系」「江戸系」など産地でそれぞれの特徴があります。色も白、青、紅、紫、絞りと豊富、また咲き方にも「垂れ咲き」「平咲」「八重咲」など多種多様な花が作り出されました。花も「かきつばた」よりも大型のものが多く、菖蒲の花びらには黄色の筋があると言われています。

花の名所としては東京(江戸)では「堀切の菖蒲園」があります。また、千葉県佐原の「水郷」静岡県掛川市「加茂菖蒲園」が有名です。

堀切菖蒲園|葛飾区公式サイト
5月下旬から6月中旬に花菖蒲が見頃となる花菖蒲園で、葛飾区の観光名所の一つとなっています。その他には、梅、藤、ロウバイ、トキワマンサクなど四季折々の花が見られます。
水郷佐原あやめパーク
加茂荘花鳥園
見応えのある花菖蒲はもちろん、オリジナルアジサイ「KAMOセレクション」はじめ、多くの新品種のアジサイを世に送り出している、加茂荘花鳥園。庭園植栽向けの品種改良に着手し、花付きが良く、丈夫でバラエティーに富む系統の改良に取り組み続けています...

「菖蒲」は「勝負」(必勝)「尚武」(武士の心得)と同音で、また、葉が刀のように真っ直ぐなことから、武勇のある花として、武士から好まれていました。
端午の節句で男の子のお祝いの席に飾られてきました。

また、菖蒲の意匠は着物の柄や武具にも扱われています。
剣道の胴や竹刀を入れる袋に使われている「菖蒲紋」

いけばなでは「かきつばた」と比較されます。菖蒲は株数多く花も高く、賑やかに生けます。また、直線的に勢いよく生けることが肝要と言われています。

「葉菖蒲」と「花菖蒲」とは?

5月の上巳の節句で「菖蒲湯」に入れる「菖蒲」はサトイモ科の植物で目立たない花をひっそりと咲かせます。また、芳香があるので、お節句ではお風呂に入れて厄除け、魔除けとして使われています。

葉菖蒲はサトイモ科の植物で、葉は艶があり、芳香があります。花は花の下部に目立たない肉穂花序をつけます。(サトイモ科の花は「カラー」や「水芭蕉」など)

葉の形が「花菖蒲」と似ているためどちらも菖蒲と呼ばれています。また、「アヤメ」も花の形が似ていることから混同されることが多いです。

シャガ(著莪)

アヤメ科 「著莪」

シャガは陸地、樹林の下などに群生します。花は春、桜の頃に白地に文の柄の花をたくさん咲かせます。葉は艶があります。庭園などに植えられているところをよく目にします。ランナーでどんどん株を増やしていきます。

花は一日花で花材として切花で出回ることはほとんどありません。(葉は出回ることはあります)
伝統的いけばなではあまり生けらない花です。